【徹底分析】なぜ人はスピードキューブにハマるのか【本能編】

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ルービックキューブの速解き競技、スピードキューブ。

いや面白いですよね。筆者はこの趣味と出会ってかれこれ7年ほどになりますが、一向に飽きる気配がありません。いまだに1日10時間くらい平気でやってしまいます。

近年流行のきざしを見せるスピードキューブ。何がそんなに面白いのか、なぜ人はキューブにハマってしまうのか、【本能編】【競技性編】の2回に分けて、様々な角度から掘り下げてみたいと思います。

今回の記事は【本能編】です。
そもそもキューブを揃えるという行為には、ほとんど本能的な心地よさがあります。まずここでは、その種の「ついついやってしまう」的な、説明しがたい中毒性についてみていくことにしましょう。

 

この記事は私が書いています

まっしゅ
まっしゅ

2013年頃スピードキューブを始める。

2019年に5×5目隠しで平均日本記録を樹立。

WCA全17競技の公式記録を所持しており、KinchRanks日本6位。

大阪大学ルービックキューブサークルROCK MEN所属。

(記事執筆時点)

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テトリスとの類似性

言わずと知れた超有名パズルゲーム、テトリス。シンプルなルールに単純な操作性でありながら、1984年の登場から現在に至るまで、根強い人気を保持しつづけています。オンライン対戦の流行や各種大会の開催を受けてe-sports的な文脈で語られることも増えてきたこのゲームですが、特徴はなんといってもやはり、一度始めたらやめられない、圧倒的なやみつき感の強さでしょう。そのあまりの中毒性から、心理学の分野で取り上げられることもしばしば。

そしてテトリスの中毒性とキューブの中毒性には、恐らくかなり似通った要因が存在します。

 

視覚の快感

テトリスもキューブも、プレイ目的は端的に言ってしまって「揃える」ことです。習熟するほど意識されなくなる感覚ではありますが、列や面が揃う様子というのはそもそもビジュアル的に心地よく、私たちにある種の爽快感をもたらすものなのです。

まずもって人間には秩序を志向する性質があります(なんて大雑把な言い方をすると各所から怒られてしまうのですが)。あるべきものがあるべきところへピッタリ収まる様というのは見ていて気持ちがいい、と言えば同意は得られるのではないでしょうか。部屋は片付いているほうが心安らぐとか、そういったお話です。

「パズルのピースがはまるよう」なんて表現もすっかり慣用句化してしまいましたけれども、秩序の実現に伴う快感こそが、人間をパズルへ向かわせる根源的な力なのだろうと筆者は考えています。

あるいはひどく単純化してしまって、こういうことです。

幼児は何が楽しくてこの手のおもちゃで繰り返し遊ぶのでしょう? 少なくともこれは「ルールがわかってハイおしまい」という種類のおもちゃではないのです。カラフルなものがピッタリはまると理屈を抜きに気持ちいい、そういうシンプルな快感が、ある種の遊びの楽しさの、その一部をなしているに違いありません。

とはいっても、それだけではいずれ飽きてしまうのもまた事実。 テトリスやキューブの中毒性は当然、様々な要素から成り立つものです。

 

ランダム性の快感

テトリスやスピードキューブにおいてランダム性は重要な要素です。ミノの落ちる順番が決まっているテトリスや、毎度同じ崩れ方になるキューブを想像して頂ければ話はわかると思います。

適度なランダム性

ランダム性がある以上、そこにはラッキーやアンラッキーが存在します。しかしそれが、全体をただの「運ゲー」におとしてしまうほど重大ではないという点、これが射幸心を煽り、人々を練習へと駆り立てるわけです。

なんて言い方をするとギャンブルめいて人聞きがよろしくないかもしれませんが、しかしランダム性の要素は、テトリスやスピードキューブの「スポーツとしての競技性」に大きくかかわってきます。すなわち、ランダム性の存在によって初めて「実力」という概念が「操作の速さ」のほかに「処理の上手さ」という軸を加えた、二次元的な広がりをもつものとしてあらわれてくるのです。【本能編】というタイトルからはズレますので、このあたりのお話は別記事の【競技性編】でまた触れることにしましょう。

※ここでいう「ラッキー」とは、純粋に結果としてのみ現れる単純なものに限られません。熟練するほど様々なパターンを「上手く」処理することができるようになるわけですが、それはあくまでも「その人が上手く処理できるパターンが偶然に現れた」という事態に過ぎない点には注意が必要です。すなわちここでは「上手くやれた」という成功体験それ自体が「ラッキー」に組み込まれているのです。

人を惑わす直接介入

せっかくなのでギャンブルの話を少しつづけます。

ギャンブルにおいては、対象が本質的にランダムな事象であったとしても、プレイヤーが直接的な関わりを持つゲームのほうが「ハマってしまう」ことが知られており、これは直接介入効果と呼ばれます。具体的には、勝った時の満足度やゲームの継続意欲、さらには勝つ確率の評価までもがこれによって高められてしまうのです。端的に言ってしまって「賽は自分で投げた方が面白い」というお話になります。
(参考:デイヴィット・J・リンデン『快感回路――なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか』河出文庫

あるいはひとつわかりやすそうな例を出すとすれば、よく商店街の抽選なんかに用いられるガラポンでしょうか。機械が回そうが受付の人が回そうが結果に影響ないにもかかわらず、しかし私たちはあれを自分で回すことを好みます。単にそれが楽しいというだけはありません。レバーを握る私たちは、当選確率や得られた景品の価値を(不当に)高く評価してしまうのです。

そしてこの直接介入効果は、恐らくキューブにおいても強く作用するはずです。キュービスト向けに説明しておけば「F2L終了時の予期しないOLLskip」などは全くこれに相当するのではないでしょうか。我々は「自分の力」で「素晴らしいラッキー」を引いているわけです。

 

パターン処理の快感

テトリスは、初めてプレイしたときには「このパーツを回転させるとこうなるから」などと考えながら挑戦するわけですが、その思考過程は次第に短絡していき、熟練すればほとんど反射的に処理を行えるようになります。

パターン処理の癒し効果

テトリスへのこういった没入は、ストレスを和らげる効果をもつことが知られています。またその効果は「プレイ内容に応じて難易度が変化する」場合に最大となることも実験的に確かめられています。
(参考:世界の大定番ゲーム「テトリス」には不安とストレスを軽減する効果があると判明 – GIGAZINE

非キュービストから見れば極めて「知的」に見えるスピードキューブも、実態としては自動化されたパターン処理の連続にほかなりません。そんなに色々考えながら回していては、10秒やそこらでキューブを揃えるなんてできないわけです(しかし同時に、考えるという行為はスピードキューブの上達において不可欠の要素です。このあたりはまた【競技性編】で触れます)。

ルービックキューブとストレス軽減に関する具体的な研究は筆者の検索範囲では確認できませんでしたが、テトリスへの没入とキューブへのそれとでは、かなり似通った影響があるのではないでしょうか。例えば「テトリス効果」と呼ばれる心理的な現象が、ルービックキューブにおいても起きることが知られています。
(参考:テトリス効果 – Wikipedia

自分のペースで走るということ

先に紹介した記事の通りテトリスには、ストレス緩和の観点で、プレイヤーごとに最適な難易度というものが存在します。スキルに対してミノの落下が速すぎればすぐ詰んでしまいますし、あまりに低速でもストレスになりますよね(だから市販のテトリスにはプレイヤーがミノを自ら落下させられる機能が備わっています)。

しかし一方で、ゲームとしてのテトリスは難易度を上げ続けることでプレイヤーに挑戦してきます。これはいわば、勝手にペースを上げてくるルームランナーのようなものです。どこかのタイミングで処理が追いつかなくなり、プレイヤーの敗北という形でゲームが終了します。

重大な事実として、キューブにはゲームオーバーがありません。ちびっ子からご老人まで、初心者から上級者までが、自分に可能なかぎりで素早い処理を目指します。各人それぞれに最適の難易度で登場するパターン処理の連続というわけです。そりゃ気持ちいいはずですよね。

※テトリスには40ラインというタイムアタック競技があります。この競技に熟練したプレイヤーは常にミノを自分で落下させますから、彼らにとって落下速度という要素は意味を持ちません。この観点で、40ラインとスピードキューブは極めて近い競技性を有します。しかし同時に、初心者は40ラインですらゲームオーバーし得るという点は注意しなければなりません。

 

手遊びとしてのキューブ

こういった文脈で注目されることは滅多にありませんが、キューブが物理的な実体であるという点は、スピードキューブの中毒性を語る上で意外に重要です。

言語化できない触感の快楽

大ブームを引き起こしたハンドスピナーや、インフィニティキューブ、少し古いところでは無限プチプチなど、手遊び玩具と呼ばれる種類の商品は数多く存在します。こういった製品の謳う「集中力アップ」や「ストレス解消」などという効能がどの程度科学的に信頼できるかは難しいところですが、ブームが確かに起きた以上、やはり何らかの心地よさを我々に与えるものであることは事実なようです。

冷静に考えると何が面白いのか説明できない、それでもついついやってしまう、そういった根源的な触感の快楽が、スピードキューブにも確実に存在するだろう、というのが筆者の主張です。

キューブの進化と心地よさ

当然と言えば当然の事実ではあるのですが、ハンドスピナーにおいては、その製品のクオリティが高いほど、回しているときに感じる心地よさが向上することが確かめられています。
(参考:なぜハンドスピナーは人気なおもちゃになったのか? : ハンドスピナーのもたらす「快」と脳活動の関連

一方で、ルービックキューブといえば回転はギチギチでシールはボロボロ、そんなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし近年、競技用キューブの進化は目覚ましく、殊に磁石搭載モデルなどは「ただ回すだけでも気持ちいい」高品質な製品に仕上がっています。

こういったハードウェアの進化により実現されるストレスのない回転は、前述の「パターン処理への没入」を高めることに繋がりますし、相乗効果として「本能的な心地よさ」をより高めるものになっていると言えそうです。

最新の競技用キューブについて詳しく知りたい方は次の記事も参考にしてください。

【2o2o年6月版】今買うべき競技用ルービックキューブ【3×3×3】
この記事は2020年6月に書かれました。 こんにちは!PuzzLeadのYuukiです。 今、競技用ルービックキューブの進化は止まるところを知らず、毎月のように新商品が登場していることを知っていますか? 今回はどのキュ...

 

まとめ

ということで今回は【本能編】と題して、人がスピードキューブにハマってしまう原因についてみてきました。

「説明しがたい中毒性」を説明する以上、本質的なお話をするのは難しく、幼児向け玩具やハンドスピナーを持ち出して類似を語ってしまうことになってしまったわけですが、「まあそういう見方もできるかもね」くらいの気軽な感じで受け取っていただければ幸いです(筆者は心理学もテトリスもまったくの素人です)。

しかし、「そういう話じゃないんだよ」と思っておられるキュービストも多いのではないでしょうか。少なくとも非キュービストに「キューブの何が面白いの?」と聞かれてこんな話をする人はいないわけです。

我々はスピードキューブというスポーツに取り組む上で、何かもっと知的で社会的で高尚な、自己実現欲求めいたものに突き動かされているのではないのか。

筆者もそう思います。そういう側面からスピードキューブを捉えた記事が【競技性編】です。
現在鋭意執筆中。どうぞお楽しみに。

コメント

  1. 伸二 より:

    キューブは4面が、白、薄〜いベージュ、薄いベージュ、薄めのベージュで出来てたら面白さ何割減に成りそうですか?  全部白のキューブをこのピースは赤、このピース黄色、このピース青!と想像してそれを必死で記憶!よーいスタート!……コレ達成感って味わえるかなぁ?ストイックってこういう事かなぁ?この場合目隠しはする意味有るんかなぁ?

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